※当サイトの転載はご遠慮ください
「なくなって初めてその大切さに気づく」というようなよくあるクオートは、しっくり来る人と来ない人で分かれると思う。この文は「なくなったもの」を長い間持ち続けていた事を示唆しているから、その経験があるかないかで実感は変わるだろう。私は特に若いころこの類のクオートの意味がわからなかった。だって若い人にとって人生は「今」そのものであり、その美しさを悉に享受できる感性が備わっているから。過去や将来を顧みないその美しさは良く言えば荒削りな原石の輝きであり、悪く言えば向こう見ずの鉄砲玉だ。
私はもう別に若くはないから、人生は今だけよ〜なんて極端なこと考えてはないけど、人間生き方を変えるのはこれがなかなか難しいもので、過去や将来というものから逃げ続けている私は、いつまでたっても大人になれない。やっかいなオジサンになってしまった。でも過去や未来の事ばかり話しているオジサンも結構やっかいだから、別に気にしない。
私はいつでも私を離脱できるよう、大切なものを持たないようにしている。ものは、手に入れると古くなるし、お金は、感性をにぶらせる。名誉は、目を曇らせるし、権力は、創作の敵だと考える。それらはつねに「過去」や「未来」を感じさせるから、私はそういう「大切とされるもの」が嫌いだ。だって、大切なものを持たなくても、自分の命があるだけで私は十分に裕福だ。逆に言うと誰にも奪えないものはそれだけだし、それ以外のものはきっといつかなくなるし。
それでは「いつかなくなる」ものに価値はひとつもないのだろうか?と思って書いたのが、今市隆二くんソロデビュー曲の「ONE DAY」でした。こんな私でも「いつかなくなる」と考えると怖いものってあるのだろうか?という思考実験のもとに、愛する人とのあらゆる瞬間や当たり前の光景を洗い出し、それらがなくなると考えた時自分がどんな気持ちになるのかを知りたくてこの曲を書いた。
答えは「残りの人生と、あなたとの一日を交換しても良い」とまで思えるような相手なら、その愛はきっと自分の命そのものに値するだろうという結論だった。普段ラブソングをまったく書かない私からすると、出来上がってこんなに重い愛の歌になるとは思わず、我ながら面食らった(三浦大知くんの「別れのベル」もそうだったけど、私こういうテーマになるとどうしてもこう、なんていうか、泥臭くなる)。あんまり幸せな恋愛したことないから、ライトなラブソングなんて書けないのよ、私。笑
この曲はこの後どうなったか、ここまでどうだったかをひとつも描いていないから、「今」の「君」と「僕」がひたすら交錯する時間が淡々と流れるだけ。恋人へのコミットメントに、未来や過去の責任を介在させない場合、どんな関係性が浮かび上がってくるのでしょうね。
この曲は「恋人との最後の一日」だと考える人もいれば、「なんでもないある一日をふと大切に思った曲」だと言う人もいたり、「今はいない恋人の事を歌っている」と感じる人もいたり…、人によって色んな受け取り方をしているのがとてもおもしろいのだけど、私としては…、どんな気持ちで書いた曲なのかは秘密にしておきますね。
そして、この曲には実は続編の曲があるのですが…、それはまた何年後か、何十年後になるかはわかりませんが、また別の話。
RYUJI IMAICHI – ONE DAY
ただ瞳 合わせることも
そう 肌と肌 ふれあうことも
一言ですら きみに伝えることも
おなじ夕陽を 見ることも
きみが隣でたてる 寝息を聞くことさえも
これがきっともしも
もしも最後だとしたら
すべての景色は変わる You…
Just for one day with you,
I could trade all my life.
きみとなら すこしも惜しくない
Just for one day with you,
Gonna trade all my life.
Just for one day
一日だけでも
思わずこぼれた笑顔も
この指で受け止めた涙も
髪をかきあげた時 ふわり揺れるその香りも
きみが隣で歌う ぼくがつくった歌も
どれもきっとひとつも
替えがきかないもの だとしたら
すべての景色は変わる You…
Just for one day with you, I could trade all my life.
きみとなら すこしも惜しくない
Just for one day with you, Gonna trade all my life.
Just for one day 一日だけ
一日だけ ただそれだけでいい
I could trade all my life just for one day
離さないこの手も心も
他の誰でもない君だから
Just for one day with you, I could trade all my life.
きみとなら すこしも惜しくない
Just for one day with you, Gonna trade all my life.
Just for one day 一日だけでも
1コメント
2018.01.25 12:28